約 1,607,654 件
https://w.atwiki.jp/armsss/pages/18.html
クロス元タイトル順 0~9 A~Z あ~ か~ さ~ た~ な~ は~ ま~ や~ ら~ わ~ テンプレ 0~9 タイトル クロス元 更新日時 ↑ A~Z タイトル クロス元 更新日時 ↑ あ~ タイトル クロス元 更新日時 ↑ か~ タイトル クロス元 更新日時 ↑ さ~ タイトル クロス元 更新日時 ↑ た~ タイトル クロス元 更新日時 ↑ な~ タイトル クロス元 更新日時 ↑ は~ タイトル クロス元 更新日時 ↑ ま~ タイトル クロス元 更新日時 ↑ や~ タイトル クロス元 更新日時 ↑ ら~ タイトル クロス元 更新日時 ↑ わ~ タイトル クロス元 更新日時 ↑ テンプレ タイトル クロス元 更新日時 タイトル クロス元 2008/03/16 19 42 23 ↑
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8455.html
前ページ次ページゼロのペルソナ 始祖ブリミル像が置かれた礼拝堂には3人の人物がいた。 一人はウェールズ皇太子。3人だけの結婚式を取り仕切っている。 一人はワルド子爵。この結婚式の新郎。 最後の一人はルイズ。新婦である。 ルイズはぼんやりと考え込んでいた。 なぜ自分は姫さまの手紙を受け取りに来た戦場で式を挙げているのだろう? 式の執り行いをしているウェールズはアンリエッタ姫の大切な人、おそらく、いや間違いなく恋人であろう。 なぜ彼はにこやかに他の人間の結婚を祝福をしているのだろう? 彼がこれから向かうのは恋人のいるトリステインではなく死を敷き詰めた戦場だというのに。 傍らに立つのはワルド。ちらりと見ると、彼はにこりと笑いかけてくれる。 なぜ自分は結婚するのだろう? 「新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか」 ワルドは重々しく頷いて、杖を握った左手を胸の前に置いた。 「誓います」 ウェールズはにこりと笑って頷き、今度はルイズに視線を移した。 次はわたしの番であろうか。きっとそうだろう、結婚には新郎と新婦しかいないのだから。 未だにルイズは現実感をつかみかねていた。三人しかいない広間がひどくボンヤリしたものに感じられる。 ふわふわとした感覚の中、思い出したのはなぜか自分の使い魔のことだった。 昨夜の彼の横顔が自然と脳裏に甦る。ひどく楽しそうに彼は色々な思い出を語ってくれた。 中にはどこにでもありそうなバカをやった話からとても信じられないような話まで。 でもきっと全て本当のことなのであろう。彼はまるで本当のことのように、楽しそうに笑いながらウソをつける人間ではない。 自分も聞いてもらえばよかった。 結婚に悩んでいること。自分に自信が持てないこと。 それにこれ自分がどうすべきなのか。 話せばよかった。 完二と話がしたい。 ウェールズはルイズの様子に気付かずに婚約の儀式を執り行う。 「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。汝は始祖ブリミルの名において……」 しかし、ウェールズの言葉は最後まで続けらなかった。 バンと扉を開けられる音と同時に声も響き渡る。 「その結婚式ちょーーっっと待つクマ!」 それはまぎれもないクマの声だった。式を行っていた三人は予想外の声にいぶかしげに振り返る。 開かれた扉からやってくるのはクマだけでなく、その主のキュルケ、そしてルイズの使い魔である完二だ。 ルイズはポカンとしていが、自分の結婚式を中断させたのがクマであり、 自分の使い魔である完二はクマにおとなしく続いていることに腹が立ってきた。 どうしてあんたはのこのことクマの後ろについて来ているのよ。と理不尽にも近い怒りが湧き起こる。 だがワルドの様子は憤然とするルイズや半ば呆然とするウェールズと異なるものだった。 ワルドは彼らの姿を見とがめて表情を鋭くしルイズに突然手を伸ばしてくる。 彼がなぜそのような表情をするのか、彼が何をしようとしているのか。ルイズには理解できない。 ワルドが手を伸ばしてくることに反応できないルイズ。その時、完二の声が響く。 「ペルソナァ!」 ルイズとワルドの傍に以前ルイズも目にしたことがある完二のペルソナ、ロクテンマオウが現れた。 ワルドはトクテンマオウを視界に認めた瞬間に飛び退いた。 ワルドが飛び退いた一瞬の後、彼の立っていた場所にはロクテンマオウの得物が振り下ろされていた。 ワルドがさらに距離をとる一方、ルイズの元に完二、キュルケ、クマがやって来る。 「大丈夫?ワルドになにかされなかった?」 キュルケが心配そうに尋ねてくるが質問の意図がつかめない。 同じく突然の展開に呆然としていたウェールズがはっと気を取り戻し、婚約の儀式を邪魔した者を叱り付ける。 「きみたちこれはいったいどういうつもりだ!」 「花嫁をさらいに来たクマ」 「なにを言って……」 「おい、ワルド!テメエよくもルイズをさらおうとしやがったな……!」 ウェールズの更なる質問は完二の大声で中断させられたが、重要なのは完二の言った言葉だった。 えっ?とルイズはワルドを見る。彼の顔にもルイズやウェールズと同じ困惑が浮かんでいる。 彼もこの状況が理解できないように見える。 ルイズの脳裏に先ほどの厳しい顔が思い出された。あれはなんだったのか、見間違いだったのだろうか。 「なんのことだい?」 「とぼけんな!仮面つけてオレたちを襲ったことを忘れたとは言わせねえぞコラ!」 仮面をつけて襲う?まさかラ・ロシェームで、自分を抱えて逃げようとした襲撃者がワルドだというのか。 ルイズはじっとワルドの顔を見た。彼は否定しない。 そして否定しない以上に完二の言葉を真実だと肯定するのはその様子だ。 戸惑っていたような表情をしていたのが、冷徹な、研ぎ澄ましたような剣のような雰囲気を帯びていく。 完二たちは身構えた。ウェールズも何をしたらいいかまだわからないようだが、事態の変化に気付いたようだった。 しかし、ワルドは彼らのことを気にしないというように、じっとルイズだけを見つめてくる。 「ルイズ、僕と一緒に行かないかい」 彼の雰囲気は鋭いものから更に変化していてもはや異常とさえいえる。 たまらずと言った様子でキュルケが言う。 「あなた何言って……」 その声に覆いかぶさるような大声で言った。 「世界だ、ルイズ!僕は世界を手にいれる!そのためにきみが必要なんだ!きみの能力が!きみの力が!」 叫び終わったあとにワルドは先ほどまでの狂気がウソのように穏やかな笑顔を浮かべた。 「一緒に行こう、ルイズ。幸せになろう」 一転した優しい言葉、しかしそれは先ほどまでの姿を忘れさせるものには足りない。 ルイズは確信した。そして自分がこれからどうするべきかも知る。 いつの間にかワルドだけでなく完二たちも見つめていた。不安そうな顔をする彼らにルイズは言葉をかける。 「ねえ、カンジ、あなた前にわたしを危ない目から守るって言ったのになんの役にも立たなかったわね」 「お、おう」 完二はいやに素直に答えた。 「今度はちゃんと間に合ったじゃない。ご主人さまとして褒めてあげるわ」 「ルイズ……!」 使い魔に報いるように笑いかけてからルイズは婚約者、いや元婚約者を睨みつける。 「ワルド、昔あなたが好きだったかもしれないわ。恋だったかもしれない……。で今のあなたはわたしを見てない。 あなたが好きだというのはわたしにあるという、ありもしない魔法の才能だけ。そんな理由で結婚しようなんて、こんな屈辱ないわ!」 ワルドの顔から先ほどまでの優しい表情は消え去った。全員へと語るような口調でワルドは喋り始める。 「わたしの目的の一つは潰えたわけだ」 「んだとぉ?」 「ルイズ、きみを手に入れることだ」 「当然よ!」 「そして……」 ワルドは突然二つ名の閃光のように素早く杖を引き抜き、呪文の詠唱を完成させた。 ワルドは風のように身を翻らせ、ウェールズの胸を青白く光る杖で貫いた。 「き、貴様……、『レコン・キスタ』……」 ウェールズの口からどっと鮮血があふれる。 「貴様の命だ、ウェールズ」 完二たちは呆然と目の前の光景を見ていた。 ルイズを守るために構えていたが、突然のウェールズへの攻撃に反応できなかった。 「貴族派!あなた、アルビオンの貴族派だったのね、ワルド!」 「そうともいかにも僕は、アルビオンの貴族派『レコン・キスタ』の一員さ。さて、ルイズ。最後にきみの胸ポケットにある手紙を頂いていくよ」 言い終わるか言い終わらないかの瞬間、完二がデルフリンガーを引き抜き、思いっきりワルドに叩きつけるように振りかぶる。 完二の攻撃をバックステップしてワルドは避けた。完二は武器を構え直す。 「キュルケ!ルイズを守ってやってくれ!」 「わかったわ」 「クマは王子さまを治すクマ」 クマがピョコピョコと歩いて地面に伏したウェールズに近寄る。 「無駄なことを。致命傷だ」 「やってみなきゃわかんねえだろーが!さあ、テメーとオレ、サシで勝負だ!」 ワルドはニヤリと笑った。 「決闘では僕の勝ちだったね?」 「へっ、二回も転ぶと思うなよ!」 完二が啖呵を切るとその手にあるデルフリンガーは柄の装飾部分をかちゃかちゃと音を立てながら喋り始めた。 「相棒!心が震えてるじゃねーか!悪くねー、俺も本気を見せてやる」 そう言うとデルフリンガーは突如輝き始める。輝きながらデルフリンガーは姿を変えていく。 発光を終えたデルフリンガーはサビに覆われた古い剣ではなかった。輝くような銀色の剣に様変わりしている。 「こいつぁ……」 「驚いたか、相棒?」 「お、おお!オマエこんなことできんのかよ!?」 「もちろん小奇麗になっただけじゃねえぜ」 「わかってるよ」 完二はぎゅっとデルフリンガーを握り直す。 体中に力を感じる。テレビの中での世界風に言うなら攻撃、防御力、命中・回避アップといったところか。たいした効果を持った剣だ。 「面白いものを見せてもらった。代わりに僕も面白いものを見せてあげよう」 ワルドは杖を立て呪文を紡ぐ。 「ユビキタス・デル・ウィンデ……」 呪文が完成すると、ワルドと全く同じ姿をしたものが4人現れた。遍在の呪文である。 ワルドは現在、遍在と本物のワルドと合わせて5人存在することになる。 「ク、クマー、ワルドが増えたクマ!」 「4人も遍在を……」 「なんという使い手だ」 二人の勝負を見守っていたクマとキュルケ、それにウェールズが驚嘆の声を上げた。ウェールズが立っているのはクマの回復が終ったためであろう。 ワルドはウェールズが平然として回復していることに驚いたようだったが、動揺はすぐに表情から消えた。 どうやらワルドはこれから戦いだろ言う時に別のことを引きずるようなことはしないらしい。 「カンジ、助太刀するクマ!」 自分の仕事をすでに終えたクマは完二に手助けを提案する。だが完二はその提案を退ける。 「やめろ!コレはオレとワルドとの勝負だ」 すでにサシと言った手前、クマの手は借りられない。 「でもでも敵は5人クマよ!」 「問題ねーよ、ちょーどいいハンデだぜ」 そして完二はワルドが5人だろうと10人だろうと負ける気がしなかった。心が震えてそれを教えている。 戦いが始まった。 五体のうち三体の遍在の杖に目に見えるエネルギーを纏わせる。まるで剣のようだと思った。 完二の思った通り、杖を剣にする呪文らしくその三体は接近戦を挑みかかってきた。 だが三人を相手にしても完二は全くひけをとらない。それどころか押しているのは完二だ。 デルフリンガーの力によって完二は体が軽く、そして体中に力が満ちていた。 戦いながら完二は先ほど船着場を飛び出してからのキュルケとの会話を思い出す。 「ねえ、カンジ。どうしてあなたルイズを助けるの?」 階段を駆け上がっているときにキュルケは尋ねてきた。 「はあ?んなこと言ったらクマや花村センパイだって……て、アレ?いねーなセンパイ?」 陽介は付いて来ていない。おそらくなにか考えがあってのことであろうと完二は納得した。 「あの子たちはあなたの付き添いでしょ。どうしてあなたはあの子に肩入れするの。別に好きだからってわけでもないんでしょ?」 「たりめーだ」 ルイズのことが好きだから助けるなどということはない。というかなぜそういう話になるかすらわからない。 「助ける理由なんて困ってるからで十分だろ」 ふうんとキュルケはなにか面白いものを見るようにしていた。 そうだ、好きどころではない。ルイズは完二にとって最も気に食わないタイプの女性だ。 エラそうにしてすぐに怒る。 この世界に召喚されてすぐに服を洗わうように命令されたことを思い出す。 なんでも出来るみたいな顔をして出来もしないことをしようとする。 ルイズがアンリエッタから任務を引き受けたときのことを思い出す。 本当は悩んでいるのに肩肘張って自分を強く見せようとする。 昨晩見た小さな背中を思い出す。 悩んでいるのに強がって、そんな姿を見せられれば助けるしかないではないか。 ルイズのことを考えると完二の心は震える。体は軽くなり、力が体中を巡る。 完二の激しい攻撃で防戦一方になっている三体の遍在。 一体をまさに仕留めようとする時に、白兵戦に参加していなかったうちの一人が風の魔法を完二に向かって放ってくる。 雷ではなく、風の攻撃だ。致命傷にはならないから耐え切ってみせようと完二は体で受け止めようとする。 しかし手にあるデルフリンガーがそれを制止する。 「相棒、俺で防げ!」 完二はデルフリンガーに言われるがまま構えた。すると風の刃は剣に吸い込まれていった。当然、完二の体には傷一つできない。 驚いて完二は剣に問うた。 「お前、魔法吸い込めるのか?」 「すげーだろ?」 完二はにやりと笑う。デルフリンガーも顔があったら笑っていただろう。そういう雰囲気だ。 これでワルドは電撃の魔法だけでなく、風の魔法も使えなくなる。しかも白兵戦でも押し負けているのだ。 ワルドの旗色が一気に悪くなる。 「くっ、一旦下がるぞ!」 ワルドたち完二から離れた。おそらく次の攻撃に移るためのインターバルだろう。だが、それは致命的な判断ミスだ。 完二の前に金色に輝くカードが現れる。 「ペルソナァ!」 姿を現したロクテンマオウはギザギザした雷状の得物を地面に突き刺すとそれを両の拳で打ち砕いた。 ロクテンマオウは魔力を解き放ち、電撃が5人のワルドを襲う。 マハジオ、広範囲に電撃を起こす魔法だ。最下級魔法であるが、完二の持つスキル電撃ブースタ、電撃ハイブースタによってその威力は引き上げられている。 普通の人間ならば一撃で戦闘能力を喪失する。 全ての遍在は消え、残ったのは地面に伏した本物のワルドだけである。 「馬鹿な……こんな……」 シビれでビクリと体を震わしながらワルドは呻いている。 完二は勝利した。 ルイズ、クマ、キュルケ、ウェールズが歓声を上げて近寄ってくる。 「すごいじゃないか!スクエアを倒すなんて」 「カンジ、惚れ直したわ!」 「さっすがカンジクマ」 「やるじゃない、カンジ!」 ウェールズ、キュルケ、クマ、ルイズが口々に完二を褒める。 「へっ、よせよ。これくらい」 完二もなんだか照れくさい。 だが勝利に酔っている間もなくウェールズはすぐに話を現実的な問題に切り替えた。 「で、これから君たちはどうするんだい?」 「どうするって……」 「もう最後の船は出てしまったているはずだ。すぐにでもこの城は戦場になるだろう」 完二、クウマ、キュルケは顔を見合わせる。どうしようかと言った具合だ。 はあ、とルイズは溜め息をつく。 「あんたら事前に考えてなかったの?」 「ほら衝動的に……ね?」 キュルケの言葉に再びルイズは溜め息をついた。 どうしようかと顔を見合わせている時、開け放されたままになっていた扉から大小二つの影が入ってきた。 陽介とタバサである。 「あ、センパイ。ずいぶん遅かったスね。もう終わっちまったぜ」 「みたいだな。んじゃ、さっさとトンズラするぞ」 そう言うと、陽介とタバサは走って、先ほど入ってきた扉から出て行った。完二たちもなにか考えがあるらしい二人の後を追う。 辿り着いた場所は港であった。当然、非難民を乗せる最後の船は全て出港していた。 「船、出てるじゃない」 キュルケがそう言うと、タバサは首を振り、端っこを指指した。 そこに一つの船があった。 「あら、まだあったの?じゃあ、さっさとあれに乗って……」 「風石がもはやない」 しかしウェールズが絶望的な現実を告げた。 陽介は頷いた。 「たしかに残ったわずかな風石を全部譲ってもらいましたけど、それでも必要量の一割もないそうです」 「じゃあ、どうするの?」 ルイズはイライラしているように言う。 「落ち着けって、ルイズ。足りないなら補えばいいんだ」 「補うって……?」 「わたしと彼」 彼というところで陽介を杖で指しながらタバサは言った。 「大丈夫なのか?」 ウェールズが心配そうに言う。 「大丈夫」 「ここまで来たらやるっきゃないんで」 タバサと陽介は強い意思を瞳に宿らせている。 「信頼してるわ」 キュルケは親友とその使い魔にウインクをしてみせる。 「クマ、タバサチャンを信じてるクマ。あ、もちろん陽介も」 「オマケみたいに言うな!」 クマはその口調とは裏腹に、言葉には信頼が満ちている。 「オレのタマ、預けるぜ」 「頼むわよ」 ルイズと完二は陽介とタバサに言った。 「おう、任せろ」 陽介が威勢よく応え、タバサも任せてというように頷いた。 「あ、そうだウェールズ皇太子、ひとつお願いがあるんですけど」 「なんだい?」 「この船動かすの俺たちだけじゃ無理なんで船乗りを貸してくんないっすかね。出来るだけ多く」 陽介の図々しいとも言える要求に少しウェールズはポカンとしてから笑い始めた。 「ははは、そうかうっかりしてたよ。確かに船乗りが必要だ。で、出来るだけ多くかい?」 「はい、出来る限り多く」 陽介は重要なことだというように強調する。 完二は陽介の意図を理解した。 できる限りこの戦場から人を逃がしたいのだ。たとえ彼ら自身がそれを望まなくとも。 自分たちは船に関しては素人。動力をなんとかしても船を操ることはできない。 そして客である自分たちに何かあったら彼らの面子に関わることであるので彼らは断れないだろう。 「クマくんには命を助けてもらったうえ、大使を安全に送れないとなっては貴族の名折れ。手配しよう」 しばらくするとウェールズは10人の船員を連れてきた。 死ぬつもりだったためか不本意そうな顔をしたが、ウェールズに叱咤激励を受け、その顔は引き締まったものになる。 彼らに加えてルイズたち6人が船に乗り込む。 その際にウェールズはクマに感謝の言葉を述べた。 「ありがとう、クマくん。きみの魔法は、どんな水の魔法も秘薬も効かないような致命傷からわたしを救ってくれた。 きみのおかげでわたしは戦場で立派に死ぬことが出来る」 クマは悲しそうな顔を浮かべる。 「クマはー、死ぬために王子さまを助けたんじゃないクマよ……」 ウェールズは微笑みを浮かべただけで何も答えなかった。 全員が船に乗り込み、準備が終わったときにウェールズが岸で大声を上げた。 「勇敢な我らが友に、敬礼!」 ルイズたち一行を乗せた船は港に集まった魔法使い、兵士の敬礼で送り出された。 「はあ、地面がこれほど恋しく思えたこともなかったわね……」 「まったくね……」 珍しくルイズはキュルケに同意する。 現在、彼女らは船の上にいたが、その船は空の上でも、当然海の上でもなく陸の上にあった。 ニューカッスル城を出港して2時間以上のフライトの末に彼女らの乗る船は草原へと不時着した。 燃料である風石は出港してすぐに切れて、ほとんど人力による飛行であった。 ウェールズがつけてくれた10人の中にいた4人の風の魔法使い、そしてタバサと陽介、彼らが船を飛ばした。 とはいえ実質的に船の浮力を作っていたのは陽介一人で、他は全てサポートであった。 船を浮かすとは大変な魔力のいることであり、多少のサポートで風石の使用量を減らすことが出来ても単体で飛ばすことなど普通ならば出来ない。 そういう意味で陽介は異常であった。 彼は本来風石が入れられるはずの動力源に終始、魔力を送り続けた。 もし彼がいなければ船は出航後、30分もしないうちに地面へと真っ逆さまだったろう。 今回の最大の功労者というほかない。そういうわけで現在、陽介は甲板でぐーすかと寝ているのも、文句はない。 いつの間にやらタバサがそれに寄り添って寝ているのもだ。彼女も魔力を使い切っている。 しかし…… 「なんでこいつらも寝てるのよ……」 「さあ……」 甲板で寝ているのは陽介とタバサ、それにクマと完二だ。陽介が寝るなり二人も彼に倣うというように寝始めたのだ。 他の船員はみな船室に入っている。おそらくそこで寝ているのだろう。 「いいんじゃない。別にわたしたち待つ以外することがないわけだし」 キュルケの言うことはもっともなのでルイズも反論はしない。 現在、船はトリステイン国内の草原にあるのだが、近くに村落もない。それに船は不時着の際に船底部分が相当破損したのでもう浮かすこともできない。 そういうわけで現在彼らは誰かが船の飛ぶ姿を見て、その通報を聞きつけたトリステイン兵でもやってくるのを待つ他ない身だ。 「それにあの子もあなたのために戦ったんだからそれくらい許してあげなさい。」 そういうとキュルケは、わたしも寝ると言ってクマに寄り添って寝始めた。 わかってるわよ。ルイズは口の中で言った。 ルイズは音を立てないようにしのび足で仰向けに寝ている完二に近づいた。 彼の顔はなんとも無防備で、間抜けな笑顔だ。マユゲがないためかいかつい印象も与える。 タバサも、キュルケも自分の使い魔に寄り添って寝ている。なんとなく自分も完二の隣で仰向けになってみる。 視界いっぱいに広がる青い空。空に残月が彼女の気を引く。青い空に消されそうになっている淡い月だ。 昨晩、スヴァルの月夜だったためその影は一つである。完二の言葉によると完二のいた世界は月が一つだけの世界らしい。 月が二つ現れることがないなどありえないような話だが、ルイズは完二の話を信じると決めている。 今、見える空は彼の世界の空と同じ景色なのであろうか。 そう思いながら彼女は眠りに着いた。 前ページ次ページゼロのペルソナ
https://w.atwiki.jp/twistedfox/pages/116.html
聖獣:ハクタク <Huk-Tuk> ◆データ <System Data> レベル <Level EXperience Point> Lv.24+2 23327 EXP. / Next 25587 EXP. 能力値 <Attribute> 能力値 判定値 力 19 力判定値 95+Lv% 格闘威力 43+1d10 魔 10 魔判定値 50+Lv% 魔法威力 33+1d10 体 12 体判定値 60+Lv% 速 14 速判定値 70+Lv% 射撃威力 14+1d10 運 14 運判定値 14+Lv% 相性 <Resistance Weakness> 電撃弱 BS無効 スキル <Active Skill> No. 名称 タイミング コスト 概要 1~3 ■素手攻撃 4~6 ■烈風破 25H 前列に剣相性 7~9 ■ハッピーステップ 22M 全体に精神相性でHAPPY40% * ■トラフーリ 25M 戦闘から脱出 * ■ディアラマ 7M 単体HP回復 * ■パララディ 5M PALYZE治療 ◎ ■スクカジャ ◎ ■雄叫び ◎ ■マハジオ ◎:アルカナ・プロモーションでの取得 自動効果スキル <Passive Skill> 名称 効果 ■ 独り言 とりあえずペルソナのデータもあげておくかという感じで作成しては見たが明らかにハクタクに切り替わってからのほうが良かった気がする。
https://w.atwiki.jp/trpg-originative/pages/31.html
Copyright(C) GCREST, Inc. All Rights Reserved. 美咲 性別 女 年齢 21 人間としての能力 HP(生命力) 12 MP(魔力) 0 STR(力) 8 VIT(耐久) 12 TEC(技術) 10 AGL(素早さ) 10 LUK(運) 23 MDF(魔法防御)0 MAK(魔法威力)0 装着ペルソナ …女神「マソ」ランク「最終覚醒」 古き中国の皇后のような衣装を身に纏う女性。氷結属性。 ペルソナ装着時能力 HP(生命力) 62(+50) MP(魔力) 150(+150) STR(力) 8(+0) VIT(耐久) 12(+0) TEC(技術) 20(+10) AGL(素早さ)20(+10) LUK(運) 173(+150) MDF(魔法防御)80(+80) MAK(魔法威力)15(+15) PHP(ペルソナヒーローポイント) 3/3 PPP(ペルソナパワーポイント) 20/20 美咲2 <ペルソナを装着するだけで使える能力> 水・氷によるダメージを受けなくなる ディア 味方一体のHPをD10+(LUK÷10)+魔法威力(15) 回復。 消費MP5 <ペルソナ降臨で使える能力> ブフ 敵一体に氷の波動でD10+10のダメージ、たまに敵が「凍結」状態に。 消費MP5 連続撃ち 敵数体にD10+(TEC÷5)のダメージ。遠距離攻撃。消費MPなし ポズムディ 毒状態を解除。消費MP5 海神の怒り 広範囲(場合によっては味方巻き込む)に、氷つぶての波で5D10+10+魔法威力のダメージ、たまに敵が「凍結」状態に。 消費MP50 人間時 筋力判定値 32% 耐久力判定値 48% 技術力判定値 40% 知覚判定値 58% 精神判定値 66% 素早さ判定値 40% 幸運判定値 92% ダメージボーナス 物理防御力(A値)0 PPP時 筋力判定値 32% 耐久力判定値 48% 技術力判定値 50% 知覚判定値 114% 精神判定値 146% 素早さ判定値 50% 幸運判定値 242% ダメージボーナス 2 物理防御力(A値)12 魔法威力 15 魔法防御力 80 [戦闘装備] なし 美咲3 アメノウズメ版 <ペルソナを装着するだけで使える能力> 一部男性タイプのアクマとの交渉が有利になる 着衣が少なくなると回避率や素早さがさらに上がる パララディ 麻痺状態を回復。 消費MP 5 メディア 味方全体のHPをD10+(LUK÷10)回復。 消費MP 20 <ペルソナ降臨で使える能力> ハッピーダンス 敵全体を幸福状態にするダンス。敵は抵抗を試みる。 MP5 「同調」アギ 炎で敵一体に攻撃。D10+魔法威力ダメージ。 消費MP5 「同調」ディアラマ HPをD10+(LUK÷5)回復。 消費MP 30 「最終覚醒」セクシーダンス 敵全体を魅了状態にするダンス。敵は抵抗を試みる。 MP15 PPP時 HP 62 MP 120 STR8 VIR12 TEC20 AGL45 LUK143 MDA50 MAT22 筋力判定値 32% 耐久力判定値 48% 技術力判定値 50% 知覚判定値 113% 精神判定値 131% 素早さ判定値 75% 幸運判定値 212% ダメージボーナス 2 物理防御力(A値)0 魔法威力 22 魔法防御力 50 [戦闘装備] なし PHP 3/3 ppp20/20
https://w.atwiki.jp/nennouryoku/pages/28.html
投稿日: 02/07/03 23 02 00005 能力名 偽りの精神と肉体(ペルソナ) タイプ 物品生成(念道具)・精神操作・能力開花 能力系統 特質系 系統比率 未記載 能力の説明 種類の仮面を具現化(一度に一種類しか具現化できない)し、それぞれの仮面を被る事で別の念系統に変わる(具現化系が主人格らしい)。 この念能力者は多重人格者であった為、こういう能力になった。別系統になった時は性格、人格も変化する。 制約\誓約 精神分裂症の延長にある能力なので、コントロールに難がある。 備考 - レスポンス 類似能力 むしろ多重人格の治療用にも見える -- 2020-11-03 12 41 13 コメント すべてのコメントを見る 物品生成(念道具) 特質系 精神操作 能力開花
https://w.atwiki.jp/trpg-originative/pages/45.html
破壊神 LV18 ミノタウロス LV33 ??? LV48 ??? LV59 ??? LV96 ??? 破壊神LV5 オグン 手に斧をかかげた、雄々しき力強き戦士の姿。古代の英雄なのだろうか、上半身に着衣はない。 HP(生命力)+75 MP(魔力)+75 STR(力)+200 VIT(耐久力)+50 TEC(技術力)+15 AGL(素早さ)+15 LUK(運)+15 MDF(魔法防御力)+50 MAK(魔法威力)+15 <ペルソナを装着するだけで使える能力> 斧を装備するとクリティカルが出やすくなる(10以下すべてクリット) 「同調」グライ 敵一体に重力でD10+魔法威力のダメージ。攻撃以外の使い道も? 消費MP3 <ペルソナ降臨で使える能力> 体当たり 敵一体に突進。STR÷3のダメージ。ただし自分も1/2ダメージを食らう。消費MPなし 「最終覚醒」マハグライ 敵全体(円形)に重力で3D10+魔法威力のダメージ。攻撃以外の使い道も? 消費MP20 「最終覚醒+最高相性」 怒濤の連打 敵一体にD4回攻撃。(STR÷3)×D4ダメージ。消費MP30 破壊神 LV18 ミノタウロス 「初期」 HP(生命力)+100 MP(魔力)+40 STR(力)+180 VIT(耐久力)+15 TEC(技術力)+5 AGL(素早さ)+5 LUK(運)+5 MDF(魔法防御力)+15 MAK(魔法威力)+18 「同調」 HP(生命力)+150 MP(魔力)+80 STR(力)+250 VIT(耐久力)+30 TEC(技術力)+10 AGL(素早さ)+10 LUK(運)+10 MDF(魔法防御力)+25 MAK(魔法威力)+36 「最終覚醒」 HP(生命力)+200 MP(魔力)+120 STR(力)+400 VIT(耐久力)+50 TEC(技術力)+15 AGL(素早さ)+15 LUK(運)+15 MDF(魔法防御力)+50 MAK(魔法威力)+54 <装着相性> さふぁいあ専用 <ペルソナを装着するだけで使える能力> 幼い系のアクマにかなり怖れられる 通常時(戦闘ではないとき)にSTRのペルソナ能力をPPP使用せずに使える 「初期」ジオ 敵一体に電撃でD10+魔法威力のダメージ。たまに敵が金縛りに。 消費MP3 「最終覚醒」迷宮からの脱出 俗に言う「ルーラ」や「リレミト」。どこにいても、神社の神木の前に戻る。接触している者も一緒に瞬間移動。消費MP30 <ペルソナ降臨で使える能力> 「初期」体当たり 敵一体に突進。STR÷3のダメージ。ただし自分も1/2ダメージを食らう。消費MPなし 「同調」ジオンガ 電撃で敵D4体に攻撃。3D10+魔法威力ダメージ。たまに敵が金縛りに。 消費MP25 「最終覚醒」パワーアタック STR×D4ダメージを敵一体に与える。次のターンまでスタン状態、回避も不可能。 消費MP50
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8460.html
前ページ次ページゼロのペルソナ 悪魔 意味……悪意・悪循環からの目覚め タバサと陽介の主従はガリアの首都リュティスを訪れていた。 シュヴァリエ・ド・ノールパルテル その理由は北 花 壇 騎 士としての任務を北花壇騎士団団長であるイザベラから受けるためだ。 ガリア王国の王女でもあるイザベラが住まう宮殿プチ・トロワに入る前にタバサは以前したように使い魔を外で待たせようとした。 だがタバサなりの使い魔への気遣いは陽介が来るようにとのイザベラからの指示のために断念することになった。 タバサはイザベラのいつものいびりが陽介に向かうのではと心配した。 しかし陽介はタバサに「心配すんなよ」と言って彼女を待合室に残し、イザベラのいる謁見室に向かっていった。 メイドに連れられて陽介は大きな扉をくぐった。 扉が大きいだけあって部屋もなかなかの大きさで、天井も高い。 扉の直線状にイザベラはいた。RPGで王様のいるところのように階段状に高くなったところでずいぶんと高そうな椅子に鷹揚に腰かけている。 「久しぶりじゃない、ヨースケ」 「そーですね」 王族相手にどんな敬語を使ったらいいのかわからないが、とりあえず以前喋った時と同じノリで喋っておく。 特にイザベラがそれで気を害した様子もないのでこの調子でいいのだろう。 「これに今回の詳細が書かれているわ」 イザベラはポケットから一つの手紙を出した。 ポケット付きとか案外実用性の高いドレスだな。と陽介は思った。 陽介がどうでもいいことを考えているとき、使用人が陽介に手渡すべくイザベラから手紙を受けとろうとするが、 彼女はわずらわしそうに手をふってそれを制した。 「ヨースケ、あなたが直接取りに来なさい」 使用人たちの間にどよめきが走ったのを陽介は感じた。別に声にだして呻いたわけでもないが、 動揺が走ったのは確かだ。イザベラが何か妙なことをしたのかと思ったが、陽介には思い当たらない。 彼らの様子をいぶかしげに思いながら陽介は玉座の階段を上がって行く。 そしてイザベラと同じ高さの段に立った。 使用人たちが息を飲んだようだが何に彼らがそれほど気を張り詰めているのか陽介にはやはり分からない。 21世紀の日本育ちの高校生である陽介には知るはずもないことだが、 平民が玉座において王族と同じ高さに立つなど許されるはずもなく、 まして今イザベラは座っているため、陽介は見下ろす格好になっている。 使用人たちは全員陽助が不敬罪になるのではと肝をひやしているのであった。 しかし当人たちはどこ吹く風と言った様子である。 陽介はともかくハルケギニアでも指折りの高貴な血を持つイザベラは王族に要求される煩雑な作法を熟知しているというのに。 イザベラがその高貴な振る舞いを実践できているかどうか疑問もなくもないが、 しかし自分への礼儀を徹底させることに関しては熱心なイザベラの光景は使用人たちの目に奇異なものと映っていた。 「わたしはあいつを妬んでる。認めるよ」 イザベラは小さな声で言った。陽介にだけ聞こえるように。 「だからわたしはあいつに死ぬような任務を押し付けるのさ」 イザベラは陽介をきっと睨む。 陽介は目をそらさない。 「んなことしたって何の解決にもなんねーと思うぜ」 陽介は言葉を選ぶように額を押さえてから呟いた。 「やっぱ、話あったほうがいいんじゃないか。一人じゃ二人の関係は変わらねえと思うんだよ」 じっと見つめていたイザベラはくくくと笑った。 「あんたは王女さまにタメ口かい?」 陽介は慌てて訂正する。 「え……、っと自分はそう思うと思います!」 さらにイザベラは笑う。 テンパったためにへんな敬語しかでなかった。 陽介は言いなおそうとするが、彼女は笑いながら「いいよ別に」と言ってそれを制する。 笑い終わったあと、イザベラから表情が消えた。 「もう遅いんだよ。それに今回の任務は本当に危険だ。話し合う前に死んじまうさ」 陽介はイザベラの目を見て言った、強い意思を込めて。 「死なねえよ。タバサを死なせたりなんかさせねえ。 もちろん俺も死ぬ気はねえ。……だからきっと遅すぎるなんてことはないと思うぜ」 言い終わるなり陽介はイザベラに背を向けて退出する扉へと歩んでいった。 出て行く前に陽介はイザベラを見たが、顔を下げていたため表情は窺い知ることは出来なかった。 世界七大美味だという極楽鳥の卵を取ってくる。それが今回、騎士タバサに課せられた任務だった。 鳥の卵を取ってくるというだけでは簡単そうであるが、もちろん簡単ならばタバサに仕事は回ってこない。 極楽鳥は年二度卵を産む。今の季節はたしかに産卵時期のひとつなのだが、本来はこの時期に卵を取ることはない。 というのは極楽鳥は火竜山脈という6000メイル級の山が並ぶ山脈で卵を産むのだが、この時期は火竜山に子育てのために火竜も集まってくるからなのだ。 なので、火竜たちの居ない時期を狙って卵を取りに行くのが普通であり、そうでない時に卵を取りに行く者は自殺志願者としか思われない。 そして今、タバサと陽介はまさしくその危険な時に火竜山脈を登っていた。もちろんタバサも陽介も死ぬ気などさらさらない。 他人がその様子を見れば、そう思わないとしても。 「あっちい……」 陽介はゲンナリしたようにこぼした。 登山で体を動かしたからというのもあるが、事実として火竜山脈は暑いのだ。 通常、山というものは登れば登るほど気温は下がっていく。 そして一定以上の高さを持つ山は頂に雪がつもっているものだが、火竜山脈は6000メイルの高さがあるにも関わらず一片の雪も認めることはできない。そ れは山のいたるところで溶岩流が噴出しているためだ。 そのため、山は高温に保たれ、その上降雨は全て水蒸気となるため火竜山脈は蒸し風呂同然だった。 陽介は腰に学ランを巻きつけていた。 だが巻いている分だけそこが熱を持ち、学ランを捨てたい衝動にかられる。 「この湯気にもうんざりだわ……。 俺って湯気にあんまり良いイメージないんだよな。なんか完二の思い出すっつーか」 「でも、わたしたちを隠してくれる」 陽介の言ったことの後半を無視しながらタバサは言った。 そのいつも変わらない涼しい口ぶりに陽介は感心する。 タバサの体も陽介と同様に多量の汗をかいているから暑いわけではないのであろう。 泥で汚れ、汗で前髪は額にへばり付いていた。白いシャツは汗で体に密着し体のラインを顕にしている……。 そこまで考えて、俺は思考を振り払うように頭を振る。 なんでこんな小さい子の体をじっと見てるんだ!アホか!変態か! 実際は17歳の陽介に対して15歳のタバサがそこまで幼いと言えないのだが、陽介はタバサを外観から12、13歳くらいだと考えているのであった。 そんな陽介の苦悩などお構いなしにタバサは登っていくので、陽介も余計な思考を振り払いついていく。 登っている途中、瑠璃色に光る鳥の羽が二人の視界を過ぎて行った。 「お、あれがそうじゃねーのか?」 「そう」 タバサはこくりと頷き、おおよそ極楽鳥が産卵する高さまで来たので卵を捜索すると陽介に言った。 また、極楽鳥が産卵する場所ということは火竜が生息するので気をつけるようにとも。 陽介は火竜に気をつけ小声で了承の意を伝えた。 それから20分ほど黙々とふたりは極楽鳥の卵を探した。 しかし、わかりやすいところには産まないのか卵は見つからない。極楽鳥が飛ぶ姿は時々見かけるのだが。 陽介がめげずにタバサに言われた通り岩の間を探っていると、二つの瑠璃色の卵を発見した。 ずいぶんと大きく、鶏の卵の十倍はあるんじゃないかと思われる。 「おい、タバサ。それっぽいの見つけたぜ」 陽介が小声でタバサを呼んだ。ちゃんと聞こえたらしくタバサが走り寄って来る。 その姿を確認して、陽介は岩の切れ間に手を伸ばした。届かない。 ならばと陽介は体をねじ込み、両手を伸ばす。 卵に手が届いた。なんとか片手ずつに大きな卵を持って、穴を抜け出そうする。しかし…… 「あれ……?やべ、抜っけねえ!」 上半身全てを岩の切れ目に入れてしまったために体が引っかかりぬけなくなってしまった。 あせって腰の位置をずらしてなんとか脱出しようとするが抜けない。 鳥がなにやら甲高い声で鳴いているが、気にも留めなかった。今は穴から抜け出すことが全てにおいて最優先だ。 陽介が極楽鳥の卵を発見したらしいので、タバサは陽介に近づいた。 陽介は上半身まですっぽりと岩の切れ間に体を入れて卵を取ろうとしていた。 これで任務も完了かと気を抜きかけたとき、タバサは空で極楽鳥がさえずっている意味に気付いた。 タバサが振り返ると、靄の中に大きな影がある。 それはタバサがエルフと並んで戦いたくない魔獣、竜だ。 しかもタバサの前に姿を現したそれは通常の火竜よりも大きく、十八メイルはあろうかという個体である。 頭には雄にあるトサカがなく、鱗の色は雄よりも色濃く燃え滾る炎のようだ。老成した雌である。 火竜は一鳴きした。極楽鳥の鳴き声に似ていたが、それは事実とは逆であろう。 極楽鳥は火竜を呼ぶためにその真似をしているのである。だが声質は似ていても声量はまるで違う。 空気が震える。それが伝染したかのようにタバサも身震いした。 その圧倒的過ぎる姿。人間がどれほど修練しようと勝てない存在それが彼女の前に存在した。 背後で陽介が「うわっ、なんの声だ!?」と騒いでいるのが聞こえる。くぐもった声なので未だに穴の中なのだあろう さらに火竜は天を仰いで咆哮した。そしてどうやらそのまま火を吹こうとしているようだ。 口から火炎が溢れる。そのわずかな火炎でも、周りの空気は揺らめく。信じられない熱量だった。 タバサに戦慄が走る。逃げ出したくなる。しかし、一度背後を振り返ってから、タバサは地面に足を突き立てた。一歩も引かないつもりである。 なぜなら彼女の後ろには彼女の使い魔が居るのだ。 自分は魔法使いだ。使い魔を見捨てることなど出来ない。 タバサは強く決意し、呪文を唱える。 「ラグーズ・イス・イーサ・ウォータル……」 ジャベリン タバサの杖の先に、太く、大きな“氷の槍”が膨れ上がる。 火竜は目の前の口を大きく開き、岩をも溶かすブレスを吐いた。 同時にタバサもジャベリンを解き放つ。 炎の息吹と氷の槍が空中で激しくぶつかった。 氷の槍が、巨大な熱量で溶けていく。 炎の息吹が、その冷気で燃え尽きていく。 激しい水蒸気が立ち上る。 時間にすれば一瞬の出来事だ。 氷と炎が生み出した霧が晴れる。 火竜も魔法使いも攻撃を放つ前の姿のままで佇んでいる。 タバサはじっと火竜を睨みつけていた。その視線は射るようだが、実際は先ほどの槍でもう精神力は空っぽになり彼女には魔法は撃てない。 もはや彼女に自衛の手段は何もなく、今残っているものは魔法使いとしての矜持とさきほどまで自身の持ちうる最高の氷槍を持っていたときの残滓である。 火竜はしばらくうなり続けていたが、それから再び首を天に向けた。再び炎の息吹を放つつもりだ。 タバサは絶望に包まれる。ついぞさっきまでの戦う者の表情はない。 それは彼女が“雪風”と呼ばれるようになってから、最も感情的な表情的なものだったかもしれない。 彼女にはもう目の前の巨大な存在に対抗することはできない。 それが火を噴けば自分の命は簡単にかき消えてしまうだろう。 タバサの口が小さく動いた。彼女が何を言おうとしたのかは彼女自身にもわからない。 その時、背後から陽介の叫びが聞こえて回転する円形の刃が火竜へと飛んだ。 そしてそれは天にのばされた火竜の首に接触し、切断した。 タバサは呆然とする。 何が起きたというのか? 切断されてかろうじて乗っかっていた切断された上部が切断面からズレて地面に落ちたときも 目の前で何が起きているか分からなかった。 「大丈夫か!タバサ!」 背後からかけられた声でタバサは後ろを振り向いた。 そこには彼女の使い魔、花村陽介が佇んでいた。両手に瑠璃色の卵を持って。 自分の使い魔が助けてくれたということにタバサはようやく気がついた。 タバサは地面にぺたりと座りこむ。 「大丈夫か!おい?」 陽介がもう一度尋ねてくる。タバサは力なくこくりと頷いた。 いつもの寡黙ではない。言いたいことがあるはずなのに声が出ないのだ。 「よかった……」 陽介がほっとしたように言った。 そのとき再び大きな足音が聞こえてきた。先ほどの火竜の鳴き声を聞いたからか三匹の火竜が現れる。 「んな!増援かよ!?」 陽介が驚いたように言うが、タバサは無感動だった。 現れた3匹は先ほどの雌火竜に比べてこぶりとはいえ、一匹の火竜より脅威に違いないというのにタバサの心は波打たなかった。 恐怖感が鈍くなっているのは、一匹でもかなわない恐ろしい火竜が三匹も現れたせいなのか、 それとも隣に立っている使い魔のせいなのか、タバサにはわからない。 現れた3匹の火竜は明らかに動揺していたようだった。おそらく強力な火竜は仲間の死体を見ることに慣れていなかったためであろう。 だが敵を前にしての逡巡はあまりにも無用心であり、そのツケは高い代償であがなわれた。 「頼むぜ、ペルソナ!」 陽介の背にペルソナ、スサノオが現れた。 スサノオは力を貯め、そして体の回りを回る刃を天に放つと同時に力を放出した。 三匹の火竜は嵐よりも激しい風の渦に襲われる。疾風の刃で体を切り刻まれ、 その体を地面に叩きつけて激しい音を立てながら地面に倒れ伏した。 タバサはただただその光景を見ているばかり。 「よしっ、終わりィ!」 タバサは座り込りこんだまま使い魔を見た。 今は黒い上着を脱いで白い服になっている以外はまるでいつもの様子だ。 とても魔法使いが死力を持ってしても倒せない火竜を4体もほふった人には見えない。 陽介はタバサに話しかけようとして、何かに気付いたらしく、卵を地面においてから改めて言った。 「ほらっ、立てっか」 ぼうっとしているタバサに陽介は手を伸ばした。 タバサはその手を取った。 イザベラは薄着でベッドの上で横になりながら、小さいころの思い出をよみがえらせていた。 自分は小さいころかあの従妹が嫌いだった。 いや、陽介が行ったようにコンプレックスを抱いていたというほうが正しいだろうか。 彼女は自分よりも小さいというのに魔法がうまかったために嫉妬した。 また、もしかすると彼女はいつも両親と楽しげにしていたことにも嫉妬していたのかもしれない。 彼女はあのころは良く笑う少女であった。 自分には母はおらず、父は自分と遊んでくれることなどなく顔を合わせること少なかった。 それを寂しいと思ったことがないわけではないが、そういうものだと割り切っていた。 しかし本当は自分の従妹のように親と楽しそうに話す姿に憧れていたのだろうか。 わからない、理由はわからないが実際自分は従妹に嫉妬していて 彼女の父が死んだ時も母の気が父の手で狂わされたときもかわいそうだとは思わなかった。 彼女に冷たい仕打ちをし続けた。しかしその結果はどうであろう? ただただ虚しさが積っただけだ。一度でも満足できたことなどない。 やり直すべきなどであろうか。遅すぎることなんてないと思うなどと陽介は言ったが、遅すぎるとしか思えない。 そもそも今回の任務は危険すぎる。いくら腕利きの彼女とはいえ帰ってこれるとは……。 思考にふけっている時、イザベラの寝室に使用人が入ってきて彼女の予想を裏切ることを告げた。 「シャルロットさまが参りました」 イザベラは呼び方を人形七号に訂正させることもせずに、使用人の言葉を吟味した。 それからイザベラの言葉をじっと待つ使用人に彼女を使い魔と共に謁見の間に通すように命じた。 陽介とタバサは極楽鳥の卵を渡すべくプチトロワを再び訪れた。 今回はイザベラの命令で二人で謁見の間に来ていた。 「ふうん、本当に生きて帰って来るとはねえ……」 尊大に腰かけたままイザベラは言った。 それからイザベラは黙りこくった。何度か口を開こうとするが、思いなおしたように口を閉じる。 それを見て、用はないと判断した卵を渡したタバサはさっさと退出しようとする。 「あ、おい」 と陽介が呼び止めようとするが、構わずに去ろうとする。 本当は宮廷の適当な者に卵を渡して帰るつもりだったのだ。 それがなぜかイザベラは直接陽介と共に渡しに来るように命じたから来ただけだ。 タバサはこの従妹を嫌っているわけではない。だが、特に騎士になってからというもの、下らない嫌がらせをされ続けていた。 だから彼女が面倒な用事を思いつくのを待つつもりはなかった。 しかし退出しようとするタバサはイザベラは呼び止められた。 「ま、待ちな、用はまだ済んじゃいないよ!」 その声が若干上ずっていることが気にかかりながらタバサは踵を返して戻った。 用はあるといいながら、イザベラはタバサが待つとなると再び何か言おうとして、それを打ち消してを繰り返した。 その作業が何度目かに及んで、ようやくイザベラは喋り始めた。 「卵を二つ取ってきたんだよね?」 いつもの尊大さが感じられない質問に、タバサはいつものようにこくりと頷く。 「実はその依頼主はどっかの大貴族でね、大金払って北花壇騎士団に依頼してきたのさ」 イザベラは早口に言う。 「でだ。極楽鳥の卵は一つ渡せばそれで済むんだ。だから一つ3人で食べちまわないかい?」 イザベラは言い切ったという表情を浮かべている。 一方タバサは表情には出さなかったが、眉をひそめる思いだった。いったい何を考えているのだろう。 しかし、陽介の反応は気楽なものだ。 「えっ、いいのか?あれってめちゃくちゃ高級なシロモノなんだろ?」 「あ、ああ、構わないよ」 イザベラはなぜかホッとした様子だった。 「ラッキー!じゃあご相伴に預かろうぜ、タバサ」 自分の使い魔に勧められ、タバサはうなずいた。もともと彼女にはイザベラの申し出を断る権利などないのだ。 それから三人は部屋を変えて、長机についた。 上座にはイザベラ。そして彼女を挟むようにタバサと陽介が座っている。 極楽鳥の卵が調理されている間、会話はなかった。 タバサはいつもどおり寡黙で、イザベラはそわそわとしていただけで何も喋らない。 陽介が「3人で食うにはこの机長すぎね?俺たち端しか使ってないし」と言っても二人とも何も答えてくれなかった。 そんな時間もほんのしばらくで、シェフの手によって料理された極楽鳥の卵が運ばれて来た。 「お、来た来た……ってゆで卵?」 陽介は自分の前に置かれた料理を見て、きょとんとして言った。 こんな豪華な宮殿で調理されるというのだからどのような調理がされるのかと思っていたら、庶民的に調理されていたのだから当然だろう。 「いい食材はね、シンプルな料理法が一番おいしいのよ」 とイザベラが言った。 なるほど、ゆで卵というシンプルな調理法にも関わらず、それからはゆで卵とは思えないほどいい香りがしていた。 「たしかにこんなデカイゆで卵ってだけでたまんねえな、ちょっと」 陽介はさきほどとは打って変わって目の前の卵を楽しみそうに眺める。 マンが肉ではないがそれに近いものがあると陽介は思った。 「それじゃあ、お食べなさい。ヨースケ、シャルロット」 久しぶりに従妹の名前を呼んだイザベラはタバサをちらりと見た。タバサは特に変わった様子もなく、ゆで卵を口に運んでいた。 イザベラは小さく溜め息を吐くと二人に遅れて三等分させた極楽鳥のゆで卵を食べた。 それから沈黙が流れる。 タバサはいつもどおりのポーカーフェイスだが、イザベラと陽介は似たような表情を浮かべている。それは困惑とか戸惑いとかいったものだ。 陽介は遠慮がちに喋り始めた。 「さすが世界七大珍味っつーの?庶民的な俺の舌には合わないつーか……」 「珍味じゃなくて美味よ。あと、わたしの舌にも合わないわね」 イザベラが陽介の言葉を訂正しつつも同調した。 そしてタバサがはっきりと言い捨てた。 「まずい」 イザベラと陽介は大きく笑った。 結局、極楽鳥の卵は火竜のいない時期に取ってきたものだけが味が良く、 タバサの手に入れた卵は食用に適したものではなかった。 しかし、イザベラにとってこの食事は忘れられないものとなる。 悪循環は終わる。 前ページ次ページゼロのペルソナ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8435.html
前ページ次ページゼロのペルソナ 女帝 意味…愛情・嫉妬 日本のとある片田舎にある地方都市稲羽市。 昨年こそ連続殺人が起きたり、アイドルや探偵が地元の高校に転校、また謎の霧が発生したなどで妙な騒がしさがあったが 今年はもともとの稲羽市らしい様子を見せていた。つまり何もない田舎町に戻っていたのだ。 そんな静けさを取り戻す町の中で3人の少年が姿を消した。 元の姿を取り戻しつつある町の中で再び起きた失踪事件は、昨年の事件を解決した者たちの心を波立たせた。 陽介、完二、クマたちが姿を消してすぐに里中千枝、天城雪子そして白鐘直斗らは捜索を開始した。 2、3日の調査の結果、彼らがこの町から出たのを見た者がいないことと、 地元の大型スーパージュネス付近で彼らを最後に見た証言が集中していることがわかった。 そのことから彼女たちは彼らはテレビの中に入ってから何らかの事情で戻って来れなくなっていると推理し、現在テレビの中を捜索していたのだった。 テレビの中は優しい風が澄んだ湖面を波立たせ美しい植物たちが咲き乱れる世界だ。ついこの間までは霧が立ちこめ、 恐ろしい怪物がはびこっていたのがウソのようである。 その美しい世界を取り戻したのは千枝たちであったのだが、彼女らには現在それを楽しむ余裕はなかった。 千枝に至っては優しげな世界の中で似つかわしくない今にも泣きそうな表情を浮かべている。 彼女は短いボブという髪型とジャージを好んで着ることからイメージできるよう活発な少女だ、男勝りとさえ呼ばれるほどに。 しかしここぞというときに気弱になりがちなのだった。 「ど、どうしよう!?花村たちぜんぜん見つかんない!」 湖畔の青々とした草原に、千枝、雪子、直斗らが話し合っていた。 テレビの中の世界を駆け回ったのだが、彼らの姿どころか痕跡すら見つけられなかった。 「しっかりして千枝!私たちが弱気になっちゃダメ!」 弱気を見せる親友を勇気付けるのは赤い服を着た少女、雪子だ。 青を基調とした探偵ルックの男装をした少女、直斗も頷く。 「そうです。慌ててはいけません。しっかりと落ち着いて探しましょう」 二人の仲間に励まされて千枝はこくりと頷くが不安は隠せない。彼女らはこの世界で仲間たちを見つけ出す手立てをもっていないのだ。 「霧が晴れてもこの世界は広いですから探すのも一苦労ですね」 直斗がそう言うと雪子がポツリと言ってしまう。 「りせちゃんがいてくれたらね……」 久慈川りせは彼女たちの仲間で索敵など、補助に特化した能力を有しているペルソナを使える。何度も彼女の力に助けてもらった。 そして今こそ、また彼女の力を借りたいところだが、そうもいかない事情があった。 というのはりせはりせちーという通称で親しまれた元人気アイドルで、彼女が稲羽市に来たのは休業のためであったのだが、 今年の四月から彼女は復帰して稲羽市を離れてしまったのだ。 しかも彼女は現在、映画撮影のために長期的に海外ロケに行ってしまっているのだ。 一年近く休業していたアイドルが復帰して一ヶ月足らずでそれほどの規模の映画に起用してもらえるなど幸運としか言いようがない。 だが彼女の力を頼りにしたい千枝たちが間が悪いと思ってしまうのは仕方がないだろう。 そういうわけで連絡もなかなかつかず、連絡が通じて帰ってきた答えは稲羽市に来れるようになるまで一ヶ月ほどかかるというものだった。 りせもいなくなった彼らを心配しているようだったが、彼女にはどうしようもないことであるので、今は仕事に専念するようにと連絡をしておいた。 「りせちゃんもそうだけど彼もまさか親の短期出張に付き合って海外に行ってるなんて……」 彼とは昨年起きた事件を追った特別捜査隊でリーダーとなった少年のことだ。 彼は非常に強いリーダーシップを持っており、こういう困ったときに頼りしたくなる人物だ。 彼女らは頼りになる二人の仲間とたやすく会えないことに運命の悪意さえ感じた。 それでも彼らと合流できるのが先になるのなら自分たちで探すしかないと3人はテレビの中を探し続ける。だが彼女らの苦労は報われることはなかった。 まさか3人の内誰も、名探偵である直斗も見たこともないファンタジーの世界に少年たちが行ってしまったなど思いもよらなかった。 「な、なあ、タバサ。まだ着かねえのか!?」 「もう少し」 現在、陽介とタバサの二人は馬上の人であった。 陽介は馬術を持ち合わせていないため、自分より一回り以上小さい以上小さいタバサにしがみついているというなんとも情けない様子である。 二人は今ガリアの地にいた。 ガリアとはこの魔法の世界ハルケギニアで最大の領土と国力を持つ国家である。陽介たちが呼び出された国はトリステインで、ガリアの北西に位置する。 二人はトリステインからガリアへ入り、ガリアの首都のリュティスに向かっている所である。 陽介はタバサにつれられトリステイン学院を出る際にタバサに言葉数少なくガリアという国に用事があるので馬を駆ってトリステインからその国に向かうと聞いた。 しかし陽介はそこに至るまで何日もかかるとは聞いていなかった。隣国とはいえトリステインの首都近くからガリアの首都への道のりは決して短い道のりではないのだ。 タバサは慣れたもので連日馬に乗ってこたえている様子はないが陽介はそうではなかった。 「もう限界!腰が!ケツが!」 「我慢して」 彼の主の返答は陽介の腰には冷酷ものだった。 ガリア王国の首都リュティスの東端にガリア王家の住まうヴェルサルテイルが存在する。 ヴェルサルテイルの中の小宮殿プチ・トロワがタバサの目的地であり、着くなり彼女はさっさと入っていった。使い魔には外で待つように言付けて。 「人間が使い魔ってのは体裁が悪いらしいし、それか?にしても外で待っとけはちょっと愛がねーんじゃないですかね?」 日は沈んでおり、肌寒い中陽介はごちた。 なんでもタバサはこの国の騎士で依頼を受けているらしい。 この世界の常識がない陽介は、学生でも仕事させられて大変なんだな。と。この世界の魔法使いにとって一般的なことなのだと考えた。 夜の冷えた風に打たれながらしばらく待っているうちにある衝動が彼を襲った。両足をすり合わせるようにもじもじさせる。 「やべえ、なんかモーレツにションベンしたくなっちまった。でもここ宮殿っぽいし、立ちションってわけにも行かねえよな」 突然の尿意に襲われた陽助はきょろきょろと回りを見渡した。 メイドを見つけたので駆け寄り、トイレの場所を尋ねる。彼女は指を差して道を教えてくれた。タバサが入っていった扉の前を素通りすればいいようだ。 「あんがとさん!」 陽介はその方向へ一目散に駆けていった。道を尋ねた少女は、あ、そっちは!と言ったが、トイレが近くあせっている彼の耳には届かなかった。 プチ・トロワの花園に一人の女性がいた。長く青い髪をしておりその青は彼女がガリア王家の血筋であることを証明している。 手入れされた髪、そして彼女が身にまとっている平民どころかなみの貴族なら手の届かぬほど高価なドレスは高貴さをかもし出すが、 今の彼女からは何よりも怒りやねたみなどといった負の感情があふれ出ていた。 彼女、イザベラの機嫌をくずしたのは彼女の従妹の態度であった。 生卵、泥の入った豚の腸を投げつけ、下着姿にしてしもべたちのさらし者にしたというのに表情の一つも変えなかった。 まるで自分のことなど眼中にないかのようにだ。 ガーゴイル 「あの人形、私をバカにしやがって……」 勝手と言えば勝手過ぎる怒りであった。イザベラも自身の身勝手さを感じないわけではない。 しかし自身の矮小さに気付きそうになると、その惨めな気分も従妹のせいだと思わずにいられないのだ。 眉間にしわを寄せ、庭園の花を愛でるというより射殺すような視線で見ているとき、彼女は視界に何者かが入りこんだのに気付いた。 「誰!ここは立ち入り禁止よ!」 「うわっ、え、っと、すいません、今すぐ出て行くんで!」 どうやら若い男のようだ。既に日は沈んでいるが庭園にある明かりで男の姿がぼんやりとだが見える。 黒い服を着た茶髪の少年のようだ。こそこそと去ろうとする姿を見てイザベラは意地悪く口を引きつらせた。 「待ちなさい。ここに来なさい」 陽介はトイレを探しさまよい歩いていると花が咲き乱れ、整えられた木々が並んでいる庭園に入った。 地球ではありえない二つの月光に照らされた庭園は言葉で言い表せないほど美しかった。 花というものに興味のない陽介も思わず見入っていると、突然どこからか大声で怒鳴りつけられた。 どうやらここは入ってはいけないところであったらしい。いそいそと元来た道に戻ろうとする。 しかし彼に警告した女性は何を思ったのか今度は逆に彼を呼びつけた。 陽介はよくわからないまま、言われたとおり彼女に近寄った。なにやらやんごとなき雰囲気の少女であった。 少なくともジュネスでは取り扱えない高級そうなドレスに身を包み、頭に冠をかぶっている。 美人といっていいが、つり目で陽介を射るように見ており、強気さが前面に出ている少女だった。 陽介はそのつり目とそして手入れの届いた長い青い髪と彼女の雰囲気に既視感を覚えた。 少女は陽介の違和感に構うことなくじっと見ながら話しかけてくる。陽介としては少し居心地が悪い。 「もしかしてあんた人形娘の使い魔じゃない?」 「人形娘?」 「人形みたいに感情のない娘よ」 もしかしてタバサのことであろうか?と陽介は思った。 人形とは決していい表現とは言えないが、感情を見せないこととこじんまりとして幼いながらも整った顔立ちは人形のようである。 「えーと、もしかしてタバサのことっスかね?」 なにやらエラそうな少女なので敬語を使っておく。 王族ならこんな砕けた敬語でいいものかと思わないでもないが、目の前の少女は気に留めなかったようだ。 「そう。あの人形にはぴったりな名前よね、タバサって。何あいつ本当にあんたみたいな平民呼び出したの!? 騎士だの言われてるけどあいつの実力もこれで底が知れてるってものね」 話の途中から少女は下品に笑い始める。 陽介はむっとした。ハルケギニアに呼び出されて数日しか経っておらず、無口な彼女のことはよくわからない。 それでも彼女は衣食住を用意してくれているのだ(衣は基本学ランだが下着や学ランの下の上着を借りている)。 そりゃ、ここ数日は馬に乗せ腰を痛めつけてくれたものだがそれが全て彼女の責任とは思わない。 少なくとも完二の主だというSッ気たっぷりの少女に比べてはるかにいい少女だ。 色気たっぷりのクマの主の方がいいが、彼女が子供なのはそれも時間が問題で彼女のせいではない。 「タバサはそこまで言われるほど悪くねーでしょ」 「あんたあいつの肩持つの?」 彼女は面白いものでも見るようににやにやと陽介を見た。陽介は少女の言葉を真っ向から受ける。 「俺はあいつの使い魔らしいですし」 そうは言っても陽介は使い魔が何をするものか理解していなかったが。 この数日過ごしてみてもそれらしいことをした記憶もない。もちろん完二のように身の回りの世話をさせられたいわけではないが。 「ふーん……」 少女は陽介を上から下まで品定めするように見てきた。 陽介は居心地が悪くなり話題をそらそうとして先ほどからひっかかっていたことを尋ねた。 「えーと、あなたってタバサのご家族なんすかね?」 そう先ほど感じた既視感は目の前の少女がタバサと似ていると思ったからだ。青い髪もそうだが目もだ。 眼鏡をしていて物静かなイメージと合わないので印象に残りづらいがタバサはつり目がちなのだ。 「どうしてそう思うんだい?」 「なんとなく似てるって思ったんですけど……」 陽介の返答を聞くと彼女は何がおかしいのか笑い始めた。 「私があいつと?」 「あ、いや、雰囲気っていうかなんというか……」 更に彼女の笑いは強くなりヒステリックとすら言っていいものになった。 「王女の私が没落したあいつと?こき使われるあいつと?無表情のあいつと?トライアングルのあいつと?」 ゲラゲラと笑う少女に陽介は不快感よりも恐ろしさを感じた。 それから彼女は顔を下に向けて、はーあと息をついた。顔を上げたとき、そこから歪んだ笑みは消えていた。 だが、つき物が落ちたような表情は一瞬のことで意地の悪い笑顔を浮かべる。 そして彼女は陽介にぐっと顔を近づけてその指で陽介の胸を指す。 「いいことを教えてあげようか、使い魔。あの人形は喋らないかも知れないが私の趣味はあんたのご主人さま、従妹をいたぶることなのさ」 陽介は言語化された悪意に戸惑う。目の前の少女はどうやらずいぶんとタバサのことを毛嫌いしているらしい。 自分の主とやらになったらしい少女のことを陽助はまだよく知らない。 しかしそれでも彼女の悪口を言われるのはいいものではなかった。その悪意は自分にも向いているのだからなおさらである。 「もしかしてタバサにコンプレックスを持ってるんじゃねえのか」 その言葉は反撃の意を込めたものだった。だが実際、陽介が感じ取ったことでもある。さきほどからの少女の言動にゆがみを感じずにはいられない。 陽介の反撃は予想以上の効果を挙げたようた。 彼女の顔から意地の悪い笑みが消えた。しかしかわりにもっと強烈な感情が表れた。 眉間に深いしわが現れ目は大きく開いて、双眸は陽介を、いや陽介の向こうの何かをじっと憎憎しげににらみつけているようだ。 あ、やべ……。 陽介はその憤怒を見て言いすぎたことを早くも後悔した。 「出て行きなさい……」 底の低い声だった。 「あっ、いや、はい!」 陽介は首をがくがくとさせてうなずいた。 彼女の地雷をこれ以上踏まないようにゆっくりと歩いていこうとするとき背中から声をかけられる。 「名前は?」 「え、花村陽介っスけど……」 彼女の意図が読めないことと、先ほどよりは落ち着いた声であったので彼は思わず正直に答えてしまった。 「イザベラ」 すぐには理解できなかったがどうやら彼女の名前らしい。呼んでいいものか? 「えーとじゃあ、イザベラさん?お元気で?」 そういってイザベラの表情を窺いながら庭園を去る。 陽介が去った後、そこに残るのは当然イザベラだけであった。 「あの使い魔……」 コンプレックスを持っている――その言葉はイザベラの胸に突き刺さった。 それは間違いなく事実であった。そしてイザベラ自身も自覚していた。 彼女とは比べられないほどの魔法の才を持つあの小さな従妹。 彼女以上に王位継承者に相応しいと家臣たちから思われているあのシャルロット。 そのことを考えると胸が悪くなる。 なのになぜ?と自分に問いかける。 なぜ自分はあれほど無礼な平民を返してしまったのだろう? なぜ名前を聞き、教えたりしたのだろう? 気まぐれだ。自分はあれが何かの暇つぶしになると考えた。それだけだ。イザベラはそう考えることにした。 「ハナムラ・ヨースケ……ふふ、変な名前」 イザベラは笑った。その笑みに不思議と悪意はなかった。 その変な名前の持ち主はというと、 「ダメだ、忘れてたけどモレそう!タバサ、トイレの場所教えてくれ!」 「我慢して」 「もっ、無理だって!」 尿意に苦しんでいた。 イザベラのこの夜の行動はきまぐれであった。 しかしその気まぐれは彼女の深い嫉妬を変えていくこととなる。 前ページ次ページゼロのペルソナ
https://w.atwiki.jp/puzzlederby/pages/72.html
転生素材一覧 対象馬がイベント限定 ダラカニ アイルハヴアナザー 対象馬がドロップ ハリケーンラン ブライアンズタイム ストリートクライ ゼニヤッタ スラマニ バゴ ケープクロス 対象馬がガチャ サンデーサイレンス トリプティク ドバイミレニアム ファンタスティックライト ダンシングブレーヴ ガリレオ カーリン アメリカンファラオ デインヒル フランケル パーソナルエンスン アゼリ ミエスク トニービン コジーン ネアルコ トレヴ ジョンヘンリー ファルブラヴ キングマンボ シンダー スキップアウェイ ポイントギヴン コタシャーン インヴァソール ティズナウ カリフォルニアクローム アラジ エリシオ ジェネラス スピニングワールド サルサビル アレッジド プレザントリーパーフェクト ロックオブジブラルタル グッバイヘイロー デインドリーム イングリッシュチャンネル キャメロット ケープクロス(オス) 属性 副属性 タイプ 副タイプ レアリティ コスト 天 - スピード - SS☆6 26 レベル スピード スタミナ 根性 1 608 405 101 99 3038 1215 304 スキル/強化型 天のシフト/- Lスキル/強化型 ブラッドクロス(天属性のスピードが2倍、スピードタイプのスタミナと勝負根性が2.5倍)/- 進化素材1段階 レジェンド像 レジェンド像 優勝盾(天) 優勝盾(天) 優勝盾(天) 進化素材2段階 レジェンド像 レジェンド像 レジェンド像 レジェンド像 優勝盾(天) 入手方法 転生馬 素材 ケープクロス グリーンデザート☆4または☆5 グリーンデザート降臨 ウィジャボード☆3 転生 ウィジャボード ダホス?☆3 転生 ダホス デザートプリンス?☆3 転生 デザートプリンス タイキシャトル☆3 史上最強マイラー ジャックルマロワ賞 98
https://w.atwiki.jp/nanohass/pages/740.html
■ 「……では、試験官は私、八神はやて二等陸佐と」 「私、リインフォース空曹長が担当するです」 立体映像のディスプレイを通じて、金髪の男に声を掛ける。 口をへの字に結んだ仏頂面。 猛禽じみた双眸の眼光。 白人故に通った鼻筋と白い肌。 ベージュを基調とした空軍風の制服が、この上なく似合っていた。 今日初めて着た制服だろうに、着られるのでも着るのでもなく、完全に自分の一部にしている。 ……年季がちゃうなあ…… それはそうと、と気を取り直し、 「試験内容はミッション形式の模擬戦闘。任務達成の条件は、目標である敵指令核の確実な破壊や」 「敵戦力は、機械兵器多数に加えて高ランク魔導師二名。結構な大戦力ですよー?」 キーを叩き、『指令核』の映像を表示。拳大の結晶体が、薄蒼い輝きを放って浮遊している。 同時、擬似再現された廃棄都市の鳥瞰図をワイヤフレームで描画し、その位置を表示した。 現在彼がいる建物からは、丁度反対側の位置だ。 「時間制限は無し。ギブアップしない限りは続けられるで。但し―――」 「機械兵器は延々と増えていきますですよ?」 「あと、戦意喪失した魔導師に対しての攻撃は禁止や。大事な部下やからな……無闇に傷つけられとうない」 男が頷いたのを確認し、立体キーボードの左下、一際目立つ赤いキーを押した。ディスプレイの隅にタイマーが展開。 『-00.00.03.』 ……さあて、 『-00.00.02.』 三つのシグナルの内、一つが消えた。 『-00.00.01.』 その全てが消えた時が、模擬戦の開幕だ。 ―――『00.00.00.』 試験、開始。両腕を武器へと換えた男が、姿勢を低く駆け出した。 ……お手並み拝見、やなあ? ■ 左右の路地に影/四つ/青い塗装/球形浮遊銃座。 着地と同時に地を蹴る/右へ/二つを蹴り飛ばし破壊/逆側の残り二つに砲撃。発射された光弾ごと蒸発させる。余波で周囲の窓硝子が熔解。 周囲に敵がいないことを確認し、左腕に付けた腕時計/携帯端末を操作、地図を表示。 任務開始よりおよそ十分/目標まで八百メートル/直線距離。道はそれなりに入り組んでいるが、壁を破って進めば問題ない。即座に疾走を再開。 機械兵器―――複数種の浮遊/自走銃座もまた、数があろうと烏合の衆。反応/攻撃/戦術/防御/機動、全ての能力が低過ぎる。 故に、問題は、 「 見つけたっ!」 上空から飛燕の急襲を掛ける女/手には長杖/弾け飛ぶ空薬莢/光弾射撃/数は十六。 右腕を振るう/打ち払う/壁を粉砕/建物の中へ飛び込む。絡め手/あの弾丸の悪辣さは、数分前の邂逅で思い知った。シグナムの忠告に心中で感謝する。 軌道は放物線/弾速は視認可能/故に容易く躱せたが、直後に方向転換し背を襲うのは予測不能。肩は即座に再生したものの、数秒は行動を大きく制限された。 攻防の基点が腕だと見切る/動作の根幹となる肩関節を狙い打つ/こちらの思考の死角を突く/外見にそぐわぬ闘い巧者。 それはいい。恐るべきは弾幕のみ。砲撃は相殺可能/反応速度/接近戦の技量は二流―――白兵戦に持ち込めばどうとでもなる。 だが、 「せあぁッ!」 炸裂/粉砕/吹き飛ぶ壁―――自分とは逆側から壁を破って突入してきた破城鎚/紅い少女。火を噴き加速する戦鎚のヘッド/正しく攻城兵器じみている。 相対距離十メートル/鉄弾による四連打/左腕の攻性防御で砕いた。 こちらは砲撃はしない/クロスレンジ担当/体格によるリーチの短さを長柄の武器で補い、実弾の多重射撃をも扱う。 ……これが厄介だ。 接近しようとすれば槌の少女が押し止め、距離を取ろうとすれば杖の女が弾幕を放つ。 中距離戦を主に、遠近を互いに補うコンビネーション。汎用と一点特化/安定と爆発力の両立。理想的な戦闘単位だと思考する。現状/単独の自分では破れない。 一進一退を繰り返す/少しずつ接近している/だが遅過ぎる。今は配置を読んで避けているが、自律兵器との同時攻撃を処理できるかは分からない。敵の数が増える以上いずれジリ貧になる。 『ブリューナクの槍』は使えない。出の速い射撃/格闘で初動を潰される。そして発射後の隙もまた大きい/『バインド』とやらで完全に捕縛されれば投降せざるを得ない。 ARMSを完全展開して強引に突破するか?―――却下。一瞬でも制御をしくじれば/感情の手綱を取り違えれば即座に赤熱化し―――その先は考えたくもない。 ……何をやるにしろ手数が足りん……! 軽量級サイボーグ―――否、生身の特殊部隊上がりが二人もいれば容易く打破できる状況。が、その手数が無いのだ。 先ず高所へと脱出。直後に捕縛されることを覚悟し、『ブリューナクの槍』で指令核を狙撃する―――不可。 荷電粒子砲は地磁気の影響を受け偏向する。精密な観測データが無ければ精密狙撃は不可能。 そもそも、『確実な破壊』が目的である以上、目標は直接視認しなければならない。壁越しに吹き飛ばすなど愚の骨頂、倒壊したビルを掘り返すのは手間だ。 確実に追い詰められている―――だが面白いと、そう考えた。 こうも悩まされる戦いは、未だかつて無い。自分の弱点/欠点/強さの可能性が浮き彫りにされていく。 だが、打破する手段/戦術は既に見出した。自分を/アレックスを/キース・シルバーを/マッドハッターを/ARMSを―――舐めるな。 ■ 『00.04.46.』 「五分と掛からずに半分以上を突破……か。予想外やなあ」 実のところ、彼女が設定したのは『達成不可能に限りなく近い任務』だ。 完全に掌握された制空権、一対多という数の差、時間が経てば経つほど不利になるという構図。 単独での正面突破という絶望的な状況で、どれだけ足掻けるか、冷静な判断を続けられるか―――それを見る為の試験。 本来なら、スタート地点まで押し戻すかバインドで拘束してギブアップを勧告する予定だったのだが。 「二人掛かりでも完全には押さえ込めへん、と……」 リミッターと試験ゆえの縛りが無ければまた違うのだろうが、一対一では確実に負けるだろう。 あの砲撃が使える遠距離戦と、多角攻撃を避け切る体捌きに加えて再生能力が十全に発揮される近接戦闘。双方で勝利できる魔導師は、海を見渡してもそういまい。 更に。極端に不利な状況に持ち込まれれば退くことを厭わず、市街地という入り組んだ地形を利用して視界から逃れ、配置の穴を読み切り前進する戦術眼。 「一体、どんな経験積んでんねや……」 渡した情報は周囲の地形のみ。恐らく、拠点制圧戦の膨大な経験があるのだろう。こちらが意図して作った穴は全く無視し、思いもしなかったポイントを突破される。 横では、リインが細かく記録を取っていた。 「被弾は一発のみ……機動力は陸戦Aランクの平均値とほぼ同等。近接白兵戦と長距離砲戦で空戦AAと同等以上です?」 「現状の査定結果は?」 「陸戦……AAマイナス相当、です」 「数の差を覆す一手が無いのが不運……や、幸運かいな?」 広域殲滅型の能力は、戦力査定においてポイントが高い。即ち危険として見られることをも意味する。 それではまずいのだ。『放置してはおけないが、封印するには惜しい』その程度の戦力でなければならない。 今のところは、それを完全に満たしてくれている。 「この調子で行けば、万事上手く片付くなあ……と、通信?」 新たに展開されたウィンドウに、焦燥を顔に浮かべた眼鏡の青年が映る。 部隊長補佐であるグリフィス・ロウランだ。彼はその焦燥を口調に乗せ、 『クラナガン近郊で護送列車が襲撃を受けました! 積荷はレリックを含むロストロギアです!』 「な……! また列車やて!? それも昨日の今日で……護衛部隊は!?」 『陸士108連隊の三個分隊ですが……既に通信が途絶えています!』 出動要請は、ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐が―――』 「あそこの三個分隊が……敵は何が出たんや!? まさか……」 『ガジェットだけではなく、魔導師と思しき敵も確認されています……緊急事態です!』 「……リイン!」 「はいです! リインフォース空曹長より通達、出動要請が来ましたです! 試験は中止、待機中の魔導師は戦闘装備でヘリポートに集合です!」 「都市部やとあたしは出れへん……スターズとライトニングが頼りやけど……」 隊長不在のライトニングと、それなりに疲労しているスターズの隊長二人。 新人達はBランクだ。限定状況ではAランク、あるいはそれ以上の戦力を発揮できるが、未知の、それも単体戦力で同等かそれ以上であろう相手には不安が残る。 が、捨て駒としては高くつく、などと考えた自分に背筋を冷やし、その方向には行かないよう自戒し思考を続行。 模索する。違法性は揉み消し可能な範囲内で、確実性が高く、被害を最低限に抑え、敵戦力を打倒できる手段を。 ―――当て嵌まる手段は、たったひとつだけだった。 ■ 蒼穹の下、炸裂音と金属音が多重する。 列車とはいえ、重要物件護送用のそれは装甲で鎧われている。上部での格闘も充分に可能だ。停車しているなら尚更。 他の分隊との通信はおろか、同分隊のメンバーとすら分断され、列車は停止してしまった。一刻も早く一人でも多く、敵を倒さなければならない。 故に。ギンガ・ナカジマは、その拳を振りかざす。 「……っせああッッ!」 全力で振った左拳が、銀髪隻眼の少女を打ち抜いた。 だが手応えは、ない。 「また幻影……!」 左から足音、咄嗟に跳躍。一瞬前までローラーを履いた足を乗せていた装甲に、六本のクナイが突き立ち、 「ち、気付いたか。仕事は完璧にしてくれクア姉……ランブルデトネイター!」 声と共に、その全てが爆破される。爆風を防護の力場で散らし退避。同時、翡翠色の魔力刃が飛翔、炸裂し、少女の姿を隠蔽していた幻術を破壊する。 別分隊の隊長だった同僚のフォローだ。どうやら合流できたらしい。 「生きているかいナカジマ捜査官!」 「私は何とか……気をつけて。あなたの相手は?」 両手両脚をバリアジャケットの上から装甲し、魔力で構成したスローイングダガーを右手に掴んだ金髪翠眼の優男。 顔に浮かべる余裕の笑みは、しかし僅かに引きつっていた。 「何とか倒せたよ。けど……もう、二人目がすぐ近くまで来ている。僕には分かる。 それも、今の僕達じゃ相手にならない。ここは一旦退くべきだ」 「一体、どういう―――」 「っ下だ!」 その叫びにつられて跳んだ。足場の無い空中に飛び出すが、彼女なら問題ない。 「ウイングロード!」 紺色の光が帯状に道を構成する。それに二人揃って着地したその瞬間、 重厚な列車の装甲が、一瞬にして分子の塵と砕け散った。 「……この感覚、その攻撃……」 突如として出現した大穴から、一人の男が現れる。 魔導師ではない。軍服の腰に長短の双剣を提げてはいるが、魔力は全く感じない。 だがその相貌。顔の造りそのものは、彼女の知るある魔導師と瓜二つ。 「やはり、お前か!」 その魔導師が、両の手に生んだ八つの刃を投げ放つ。 翡翠色の光を曳いて飛翔する魔力刃は、しかし抜き放たれた短剣の一閃で掻き消えた。 禍々しいまでに紅い刀身の峰には、剣という用途にそぐわない精緻なモールドが施されている。 「超振動に高密度AMF……逃げろナカジマ捜査官、いや、ギンガッ! 奴は、完膚なきまでに君の天敵だ!」 「仲間を置いて、逃げられるわけがないでしょう!?」 隙を突かんと飛んだナイフを、圧搾空気の一撃で吹き飛ばす。 「父さんが援軍を呼んでくれている……だから、それが来るまで持ち堪えます!」 カートリッジをロード、増えていく幻影を片っ端から叩き潰していく。 回線はとっくの前からオープンだ。今の言葉は、ガジェットを潰して回る他の同僚達にも伝わった筈。 「……僕が行こう。だけど二分だけだよ。今の僕だとそれ以上は持たない」 今の、という言い回しにギンガは引っ掛かるものを覚えたが、それこそ今はどうでもいい。 「二分もあれば充分……私がこいつらを倒せるわ」 「……随分と、言ってくれるな―――!」 銀髪の少女が、声と共に無数のクナイを投げ放ち、 手甲の魔導師は、さながら猫のように跳躍してそれを避け、 双剣の男は、それを迎え撃つように両手を広げ、 ギンガは、虚空に足場を展開し駆け抜ける。 ―――あと、二分! 前へ 目次へ 次へ